向ヶ丘遊園
モクレン
「これはまた豪快な生け花だなぁ」
週末に二人で外に出たとき、並んで歩いていたあの人がシモクレンを見上げて言った。
大通りからうちの方に入る路地の入り口の歩道に、高さ3mほどのシモクレンが植えられた。
市か県が手配した造園業者の手によるものだ。
季節がら、シモクレンにはすでにつぼみがついていて、順調に根付いたのか、植えられて2〜3日のうちに花が咲き出した。
「ねぇねぇ、友達をうちに呼んだときにさ、『シモクレンの樹がある道を入ってきてください』って言うのってちょっと良くない?」
足を留めて、シモクレンの樹を見上げながらあたしは彼のひじを引っ張りながら提案する。
「そうかぁ?花が咲いてなきゃわからんぜ?咲いててもわかりそうにない友達も居るのに」
あの人は真顔で言う。
「いいのよ。モクレンの樹がわからないような人はうちに呼ばなきゃ」
濃い紫色の大きな花弁が、うなづくように春風に揺れた。