百合ヶ丘

Dowa2009-02-01

風が強く吹きましたがいい天気でした。
午前中ちょっと遅めに祖父の形見分けの着物を持って百合ヶ丘の「白ふじ」さんに行ってきました。
着物のことはここで相談にのってもらっている話好きのご主人がやっている染み抜き、洗い直しなどの着物専門店です。


今回相談に持ち込んだのは、亀甲柄の絹の夏物と柄の御召の夏物。
そして、やはり祖父の袷の着物と羽織と帯を着て出かけました。

実は今日着たこの袷は、軽くて暖かくて裾捌きが異常に良いので、これが噂に聞く「御召」ではないかと思っていたのですが、ご主人に見てもらったところやはり御召ちりめん。紋御召のなかなかのものだそうです。

それよりびっくりしたのは羽織も無地御召で、裏地もちょっといいもので仕立ても「今どきだとこんな手の込んだ仕立て方はしない」という丁寧な縫製の「値打ちもの」とのことでした。うほ。


肝心の夏物ですが、柄物のほうはかなり布がへばってきているので、洗わないほうがよいとか。
手入れするとしたら全部ほどいて縫い直しだということですが、布が現在ではもう生産していない細い糸で織られており、きちんと直せる人が居ないかも、とのこと。
どのみち結構「¥」がかかる、といわれました。


しかし、それより「価値物」と言われたのが亀甲柄の単のほうでした。
亀甲柄の中に十字絣が織り込まれたもので、布の薄さ、手の込んだ柄、いずれをとっても「ちょっと見たことがない」というほどのもの。


かなり着たものらしく、一度ばらして仕立て直ししたようで、傷んだ箇所や破れた箇所を修繕するのに検討しなければならいということなので預かっていただき、あとで見積もりを連絡していただけるようにしました。


いずれにしても、今日の着た物、持って行ったものは大げさに言うならロストテクノロジー満載ということになります。


まぁいろいろ理由はあるのですが、簡単に言えば、工業化と近代化によって品質より大量生産に目を向けた結果、数百年かけて培われた技術をたった50年で「ロスト化」してしまったと言えます。。。。


御召の着物の軽さと心地よさはもはや格別です。ほかの着物が着られなくなるくらいの気持ちよさです。
温かい、とか、涼しいとか、体が楽とか、そういう次元ではない「心地よさ」なのです。

暖かい冬用のジャケットや下着も持っていますが、衣類としての「格」が違います(値段とか和服だからとかではなくて)。まったく別次元のものです。


万人に着物を着ろとは言いませんが、せめてこの御召のような絹の布地で作った服を一度身に着けてみれば、それだけで技術の尊さがわかるのに、と思うと歯がゆい思いがぬぐえません。


強い風が雲ひとつないソラを吹き渡る中、袖や裾をはためかせてそぞろ歩きながら、肌をこする着物の心地良さを満喫しつつ帰りました。

きっと祖父もこの着物を着てこんな思いでソラを見上げたに違いないなぁ。