神泉

Dowa2011-07-28

えんじゅの花とがくが歩道に落ちて、木の下だけが黄緑に染まっています。
そこに踏み込むと、つかの間だけこの蒸し暑さを忘れることができそうなえんじゅの花の甘い香りが微かに漂っています。

どういうわけかスズメがえんじゅの白い花びらを奪い合うようにしてくわえてどこかに運んで行きます。

食べるのかな?蜜が付いてるとか?


昨夜、帰宅して着替えていると電話が鳴りました。
通知の番号を見ると関東北部の市外局番。普段なら無視するところですがなんだろうと思って出てみると、聞き覚えのある女性の声で「ドワさんのお宅でしょうか。もしかして、昔、アルバイトに来てくれてたドワさん?」


聞き覚えがあるはずです。
以前、もう10年も前に、群馬の草津にある動物園で冬の間の住み込みのアルバイトをしたことがあります。
そのときお世話になった動物園の社長さんの奥さんです。社長さんもその場にいらした(社長さん宅から?)ので電話を代わっていただいて「どうもその節は・・・」とごあいさつ。


なんの脈絡もなく電話をいただいたわけではありません。
実は、先月にこの動物園「草津熱帯圏」で「サポーター会員」なる企画の募集が始まり、そこに応募しました。
単に観光客として訪れるだけでなく、動物園のサポート活動を通じて動物園の情報や来場特典などを提供する参加型のサービスです。

この「草津熱帯圏」だけでなく、全国の動物園の経営はどんどんと厳しくなってきています。まぁ、それはこの不況で動物園に限ったことではありませんが。

動物園を経営、運用に従事されている方々はほんとに動物が好きで、それはここの社長さんも例外ではありません。
動物の命を預かる責任からなんとかお客さんを呼ぼうと各地の動物園はさまざまな工夫とアイデアを凝らしています。

都市型の動物園とは違い、草津熱帯圏は観光地にある施設なのでリピーターが来場する間隔はどうしても長くなります。
これは、そうしたリピーターをひきつけるために資金を集めつつサービスを提供しようという試みのようです。

会費は3年間有効で1万円なので、微妙に敷居が高い気はします。少なくとも来場したことのない新規のお客さんはまず登録しないでしょう。

しかし、草津までの旅費、宿泊費など、草津に遊びに行くことを考えた場合、その中で占める金額としてはなかなか良い料金設定じゃないでしょうか。

この動物園は爬虫類/両生類の飼育数がほかの動物園と比べて群を抜いて多く、単に「動物かわいいー」という層ではなく、もう少しコアな層に焦点が当たっていることもこの金額の根拠になっていると思います。


このサポート会員制度を知ったとき、わしは社長さんの攻めの姿勢と料金設定を含めた英断に感動しました。うーん、なんというか、感動しました。


それでこれを知ってすぐに申し込みはしたのですが、もう10年も前のアルバイトのことなので、先方は覚えてられていないか、忘れていなくても今更「どうもドワです」と名乗るのもおこがましいように感じ、名前や住所などの必須項目以外は特にコメントもせずに応募していました。
それをどうやら記入した名前だけで思い出していただけたようで、*1「もしかしたら、、、いやたぶんそうだろう」ということでわざわざお電話をくださったという次第でした。


草津熱帯圏
http://nettaiken.com/index.html

サポーター会員制度
http://nettaiken.com/index-5.html


お金や物というのは、それはそれで大事で必要ですが、それらを所有してもそれらが手元を離れてしまえばそれはもう他人のものであり自分とは一切の関わりがないうつろうものです。

そのこと自体は単にそういう性質のものであるというだけなので嘆くことはないと思いますが、誰かと過ごした時間とその記憶は、たとえその時間が過ぎてしまったとしてもなにやら確かにここに何かを残して行くような気がします。


ひとしきり、近況のご報告などをしたあと、近いうちに草津をまた訪れますとお約束して受話器を置きました。


退職・転職の検討などで不安もないわけではないこの時期に、何か勇気づけられた気がします。

*1:住所はもちろん10年前と変わっている