下北沢駅
先日、夜道を歩いていると路上を虫が這っていました。Gかとおもったのですが、よく見ると蝉の幼虫。
おそらく土中から這い出して、羽化するために高所を探して路上に迷い出たのでしょう。
車に轢かれるのを見過ごすのも忍びないので摘み上げて路肩の高くなったところに置きました。
「いやーーー!」とばかりに前肢を振り上げて抗議していましたが、とりあえず事なきは得たようです。
そして今日の明け方のことですが、なにやらドアを叩く音で目が覚めました。
誰かと思い眠い眼をこすりながらドアを開けて出てみると・・・
「こんばんわ。私は先日助けていただいたセミでございます。おかげさまで無事に羽化することができ、今晩先ほど、天寿をまっとういたしました。これもあなた様にお助けいただいたおかげ。この世の名残に何か恩返しがしたく参上いたしました」
と立派なミンミンゼミが立っていました。
「そうかい。あのあと息災ですごせたか。それは良かった。しかし、助けたのはつい先日なのに天寿をまっとうってのも・・・」
「はい。私どもセミは羽化してからの命はごく限られたもの。でも土中で何年も過ごしたあとの地上で過ごす日々はなんともすばらしいものでした」
「まぁまぁ、それなら、いいよ、いいよ。別に恩返しがして欲しくて助けたわけでもなし。良い生涯をすごせたと聞けてそれだけでも気分がいいってもんだ。気にせず成仏しておくれよ」
「いいえ、それでは私の気が済みません。何か恩返しを1つ。なんでしたらここで賑やかに歌いましょうか?」
「おいおい、よせやい。今何時だと思ってるんだ。近所迷惑になっちまう。そこまで言うなら何かしてもらうのはやぶさかじゃあないが、何か他のことはできないのかい?」
「あいにく土中の生活が長かったもので、世の中のことには明るくなく・・・」
「どうもヘタな駄洒落だね。せめて昼間に出てきてくれりゃ良かったのに、なんだってそんなに慌てて出てきたんだい?」
「はい。助けていただいたときに殻は脱ぎ捨てたので、これ以上、羽化羽化(うかうか)していられません」
これ、ホントのようなウソの話し。
どうも今年の夏はがまがえるやらセミの幼虫やらがよく路上に居るのに出くわします。