着物・和装をやってみる

和服を着てると、自分では着ないが着ないなりに興味がある人、着てみたくて興味があるけど遠巻きにする人、「へぇ!ちょっと着てみたい!」と声をかけてくる人が居るようです。

もちろん、まったく興味がない人も居るとは思いますが、すれ違うだけの人でも何かしら「ふーん。和服ねー」程度には感想はあるようで、近所を歩いているとたびたび「いつも和服ですね」とか声をかけられたりします。


立て続けというわけではありませんが、ここのところで和服を着てみたいという質問を受けたのでメモ程度に着方というかわしの思うところの「始め方」など。
あ、もちろん男の着物に限定です。

●必要なもの

わし的には必要なものは以下。

・【着物(長着)】:いわゆる「着物」。洋服の上着とシャツの中間的役割。


・【襦袢】:中着(という言い方はあまりしない)。肌着とシャツの中間的役割。(たぶん)次の2種類があります。
 → 長じゅばん:着物みたいなワンピースになっているもの。まんま着物のインナーの形状。いわゆる「ちゃんとした襦袢」。わしは冬はこれ。大きいので洗いにくかったり絹のものは自分で洗えなかったりする。

 → 半じゅばん:腰から上の襦袢。木綿などのものが多く洗いやすい。下半身はステテコをはいたり蹴り出し(裾避け)という腰巻の布をつけたりする。というわけでステテコや蹴り出しもここに含む。


・【肌襦袢】:肌着で下着。Tシャツなどでも代用可(着物用にU首シャツというのがある)。わしは夏場は暑いので着ないことが多い。


・【帯】:普通は角帯。平たいが芯のある幅9cm程度、4mくらいの布。


・【腰紐】:腰に巻いて襦袢や着物を固定する紐。2本あると良い(慣れれば1本でも良い)。


・【下着】:トランクスでもブリーフでも間に合う。でも横開きの構造上、ふんどしのほうが良いかも。少なくとも腰周りはもそもそしないので着心地がよくなり、着崩れしにくくなるとは思う。


・【足袋】:既製品で間に合う。夏場などはなくても良いが持ってはおきたい。靴下と靴の中間的役割。


・【履物】:草履が良い。ビーサンでも間に合わないことはないが・・・。下駄も良いけど歯があるものはタイル貼りの階段などですべるので注意。


着物を(ちょっと本格的ぽく)着てみようとした場合に欲しいのは上記のもの。
まぁ、最初は下着と肌襦袢はわざわざ買うことはないと思うのでそれ以外。

●まずはどこでどう買う(入手する)か

一式を誰かに貰うとかでなければ、最も簡単なのは「セット物」を購入することです。
「着物 セット」などでググレば出てくると思いますが、特にネット通販のお店では、季節の頭にその季節の着物をセットで販売してます。

価格は1セットで2万円とか3万円あたりが多いようです。

セット物の利点は埋めなければならない装着箇所(スロット!)を全部埋められる状態で購入できることと、コーディネイトを自分で考えなくて良い点です。

腰紐や襦袢はともかく、長着と帯の組み合わせだけでもいろいろありますし、知識がないと選びようがありませんがセット物ならお店のほうで、少なくとも「無難な」組み合わせで販売してくれます。これ大事。


洋服でも同じです。
雑誌の写真やデパートのディスプレイにあるものを一式買えば、とりあえずは「現代の洋服の着こなし」にハズれないものが揃うのです。
それに洋服で雑誌やショーウィンドウのままだと「あ、これwww雑誌で見たwww」とバレたり、町で同じ組み合わせの服を着ている人と鉢合わせる可能性はありますが、和服ならその可能性も低いと言えます*1


セット物のメリットはもう1つあります。
必要な装着部位は揃っているので、あとから帯だけ、足袋だけ、と少しずつ買い足してその部分を入れ替えるだけでバリエーションが広がっていくというところです。

また、化繊(大抵はポリエステル)で織られているものが多いので、汚しても洗濯しやすいため、練習で何度も着たり汗をかいたりしてもお手入れがしやすいということもあります。


で、デメリットです。
コーディネイトが決まっているというのはメリットとデメリットで表裏一体なのでこの点は別として、2万円〜3万円の価格帯だと先述のとおり化繊のものがほとんどという点です。

化学繊維は発色などの点で天然繊維に勝る部分はあり、高品質のものは日々天然繊維を追い着け追い越せで進歩しているので、一概に「化繊だから悪い」というわけではないとは思いますが、この価格帯の化繊はどうしても天然繊維に比べるといろいろと物足りない部分があります。

まず言われるのが「冬に寒く、夏に暑い」ということです。まぁ特に夏の暑さは耐え難いものがあります。

あとは着崩れしやすいということもあります。
ポリエステルはどうも滑りやすいので、長時間着ていると緩んできたりずれていったりすることが多いのです。

それと付属してくる小物などもちょっと安物チックなものが多いのも確かです。

とはいえ、こういうこともいろいろと着てみてわかることなので、デメリットも含めてまずはセットで購入することは検討に値する「始め方」だと思います。


●コツとか扱い方とか

着方のコツは、とにかく何度も着ることです。
男の着物の場合、帯の結び方で若干覚えることがある以外はそれほど難しい手順はありません。
むしろ、着て歩いて座って食事などをしてみて、着心地がよく着崩れにくい微妙な帯の位置や結ぶ強さなどを感覚で覚えることです。

帯なんかも別に後ろで結べるようにならなくても前で結んで後ろにぐるっとまわしてしまえばいいのです。そんなもんです。

●着物の手入れとか

基本的には木綿や麻のものは自分で洗うことは可能ですが、型崩れが気になるものは洗いに出したほうがよいと思います。
また正絹のものは自分で洗うのはやめたほうがよいと思います。
これらは着物の専門のクリーニングに出します。

といっても普通に着ていた程度であればシーズンの終わりに出せばOK。
ウールなどならわしは2シーズンおきに出しますし、正絹でも一番よく着たもの1〜2枚をシーズン終わりに出す程度です。
正絹の長じゅばんも同様です。

ただし、何かこぼしたり汚した場合は早めに出したほうが染み抜きもきれいで安くできるそうです(汚した翌日くらいに持って行くほうがいいとか)。

日常の手入れとしては、着たあとに少し吊るしておいて、湿気を抜いてから畳みます。
畳み方は覚えなければならないのですが、これもそれほど難しいものではありません。折り紙の鶴を折るよりはカンタン。

帯も時々洗いに出したほうがよいということですが、毎シーズン出すほどではありません(わしの場合)。

足袋、肌襦袢などは基本的には1回着たら洗濯します。

●小物や袴について(あったらいいの?ほかのもの)

あると良い圧倒的に最優先の小物は「手ぬぐい」です。

手ぬぐいの便利さと機能性は洋装のときでも手ぬぐいが手放せなくなるほど。
汗を拭いたり手を拭いたり、何かを包んだりちょっとした紐の代用にしたり、これ一枚が懐にあるだけでかなり心強い外出のお供です。


わしが最近良くつけている袴ですが、足捌きがよいので長く歩いたりするには楽です。
このため、今は地震などの震災対策の意味もあって穿いてます。

着け方がちょっと面倒なのですが、畳み方にも少し気を使います。
何度か畳めば慣れますが、夜帰って畳むのはちょっと面倒なことも多いです。

着流しより改まった感じになりますが、袴を着ければ正装というわけではないと思います。正装はたぶん正絹(素材)で、紋付の羽織、扇子(白扇子?)、などになると思いますがたぶん地方とかでもまちまち。良く知らんw

正絹でも紬(織り方/糸)は正装にならないとかいう話しもあり。
まぁ、現在でも冠婚葬祭の身支度は小物の色に至るまでいろいろ決まっているので和服も同様なのでしょう。

うーん、あえて例えるなら、着流しがジーンズやチノパンでのカジュアルだとすると、袴はスラックスとジャケットでちょっとスマート系のカジュアルって感じ?(わし的に)

あ。わしは、歩きやすいというのに加えて、雨降りなどで着流しだと足元から裾が汚れそうな場合の対策としても袴を着けることがありますね。
もっとも、これは持っている袴が木綿で自分で洗えるからですが。

また、袴はやはり夏場は暑いのでこれからの季節はあまりオススメできません。


あと、半襦袢の項で出てきた「ステテコ」と「蹴り出し(裾避け)」。
ステテコはたぶん説明は要らないと思います。ちょっとダボっとした膝までの長さのパンツみたいな肌着/下着です。夏場の浴衣のときなどはもっぱらこれです。


蹴り出し(裾避け)は、腰巻スカートのようなものです。丈はすねの下のほうまでありますが、足首までは届かない程度。つまり着物を着ると隠れます。
これがあるとウールなどでも裾捌きが良くなって歩きやすく、また着物に直接肌が触れないので汗などで着物が汚れにくいという利点があります。
まぁ、半襦袢は長じゅばんの下半身がないものなので、ツーピースになっている襦袢の下半身部分という理解でよいでしょう。

実はコレ、案外入手が難しかったりします。男物の襦袢(普段使い用。特に夏用)は、実はお寺のお坊さん向けのショップで手に入ったりします。これマメな。


あとは羽織と羽織紐はいろいろと楽しめるところで、扇子なども小物として欲しくなるものですが、「始め方」に含めるのはこのくらいかな。

*1:セット物でも帯の柄を何種類かから選べるなどのオプションがあったりします